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一般にピンク・トルマリンは鉱物学的な分類においてはエルバイトに属している。しかし、少数ではあるがリディコータイトの組成に近いものも知られており、最近では後者が増加の傾向にある。 Pink tourmaline generally belongs to elbaite under the mineralogical classification. Tourmalines which have formulae closer to liddicoatite are rare but do exist, and their number is increasing recently. 鉱物はその結晶構造と化学組成によって分類されている。そして鉱物名は国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物および鉱物名に関する委員会の承認を得て初めて国際的に認知されたことになる。 トルマリンは鉱物学的に分類すると現在13種の端成分が知られている(うち一種は未命名である)。しかし、現在でも宝石学においては色や外観によって変種分類されており、鑑別書上では“天然○○トルマリン”と色名を冠して表記されることが多い。また、以前は色ごとに固有の名称が与えられており、現在でも商取引では使用されていることがある。 さて、宝石として一般的なピンク色のトルマリンは鉱物学的にはエルバイトに属している(市場に流通する多くのものは照射により濃色化されている)。しかし、少数ではあるがリディコータイトに属するものも知られている。リディコータイトはトルマリンの結晶構造のXサイトをエルバイトのNaに対してCaで埋めている。屈折率や比重などの物理特性はエルバイトと完全に重複している。したがって、厳密には一般的な宝石学的検査では分類が困難であるが、概して両者には以下のような特徴がある。 |
<エルバイト> ・ 色は彩度が高く、透明感あり。 ・ マンガン吸収バンドが見えにくい。 ・ 拡大でトリカイトやチューブ・インクルージョン。しばしば錘面と柱面領域の成長線。 ・ 色帯はほとんどなし。 <リディコータイト> 色は彩度が低く、やや褐色味。 マンガン吸収バンド明瞭。 拡大で結晶インクルージョン。 錘面と底面の分域境界による鋸刃状成長線(写真−1)。 錘面領域の色帯(写真−2)。 リディコータイトは1977年にGIAのRichard T. Liddicoatに因んで命名されており、マダガスカルのAntsirabe 付近が模式地である。エルバイトと同様にペグマタイト起源と考えられているが、成長構造や微量元素の相違(最近見かけるリディコータイトはBiやSrを含む)から生成環境が異なると思われる。 注)ここでご紹介したエルバイトおよびリディコータイトは鑑別書上では「天然ピンク・トルマリン」と表記されます。 |