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宝石学会(日本)講演会から
円形ブリリアント・カットのプロポーションについて
     1999年 宝石学会(日本) 講演

 ダイヤモンドの品質を4Cだけでなく、見た目の美しさなどを加え、4C+αで判断すべきであるとの主張が一部でなされ、その例証としてグレーディングされた個々の石につき、見た目でその美しさを判断するアンケートが2年ほど前に行われ、その結果が業界紙に報ぜられていた。その結果を見ると、従来法、すなわち4C法により高い評価を受けている石が必ずしも高い評価を受けてるとは限らない。この理由は、10倍ルーペでは発見できない微小インクルージョンによる光の透過障害にあるとされている。もちろん、これも理由の一つではあろうけれども、筆者は、その石のプロポーションにも大きく関係しているのではないかと考えている。この根拠として、筆者の研磨工場における経験、最近号のG&G誌(1998年秋号)の円形ブリリアント・カットのプロポーションとブリリアンスの関係についての論文、あるいは20年ほど以前‘Diamond Research1979,所載のJ.S.Dodson
の論文などがある。これらによると、現在に至るまで円形ブリリアント・カットのカット評価基準として使われているトルコウスキー論文とは、かなり異なったプロポーションでも充分なブリリアンス、ファイアとシンチレーションを作り出すことが可能であるとの結果が報告されている。
 トルコウスキー以後、上記G&G誌に至るまで様々な研究論文が提出され、数多くのプロポーションが提案されている。これらについてG&G誌がまとめた表によると、テーブルの大きさでは40%(Dodson、1979)〜69%(Eppler、1940)、クラウン角度では25.5°(Parker、1951)〜48.6°(Suzuki、1970)、パビリオン角度では36.5°(Stoephasius、1931)〜47°(Elbe、1972)である。
 このように異なった結論が出される理由は、基本的には円形ブリリアト・カットをどのように考え、どのように見ようとしているのかの立場の問題ではなかろうかと考える。
 具体的には、(1)ブリリアント・カットに何を期待するのか、ブリリアンシー(反射して目に到達する光の量)なのか、ファイア(分散により生ずる色)なのか、あるいは、シンチレーション(石や光源または観察者が動くことによる光のきらめき)なのか、またはこれらのどのような組み合わせを期待するのか、どれに重点を置くのか?(2)どの位置から石を観察するのか、テーブル面の垂直上方からか、斜め上方からか、あるいはこれらの適当な組み合わせによるのか?(3)どのような照明を用いて観察するのか?(4)プロポーションを表現するためのパラメータとして何を採用しているのか?(5)経済的面を考慮してか?
 補足して説明しておくと、(2)についてトルコウスキーは、クラウン側から出てくるすべての方向の光の総和をブリリアンシーと考え、その後の研究者もDodsonに至るまでほぼ同様である。今回のGIAでは、テーブル面から垂直に出て行く光を100%とし、これからθ°をなして出て行く光はその光量にcosθ°の二乗のウェイトづけをし、これをすべての方向につき集計計算しブリリアンスとしている。WLR(加重反射光量)である(本誌7月号15ページ参照)。(4)のパラメータについては、本来ブリリアント・カットは三次元の立体であるにもかかわらず、トルコウスキー以来その計算は二次元的、平面的な配置のプロポーション・パラメータを用いて行われている。したがってそのパラメータの数は、テーブル径、クラウン角度、パビリオン角度およびガードル要さに限られている。

ブリリアント・カットにはクラウン、パビリオン面に加えて上下のガードル面とスター面が存在する。これらの面はクラウンやパビリオン面とは異なる角度と方位を持ち、異なる光学効果を寺つ。これらの要素を勘案しなければ正確な答えは得られないことは当然である。例えばロアー・ガードル面について説明すると、この面の大きさと角度は笹目点Sの位置により変化し、これにともないパビリオン面の大きさも変化する。光学効果が変化するのは当然である(図1参照)。スター面の先端位置も同じことである。すなわちパラメータとしてスター長さ(スター点)、ロアー・ガードル長さ(笹目点)を追加する必要がある(GIAの論文では、これにキューレットとガードル面数を含め合計8つのパラメーターを採用している)。ただ、ここまで論じてきたGIAを含め各研究結果は、いずれも対称性が完全であるとの仮定のもとに計算されたものである。現実のカットは完全な対称性を示すものは、まずまれである。たとい平面的・二次元的に対称的に見えても、立体的・三次元的には必ずしもそうでない場合が多い。端的に言えば、ガードル厚さの不ぞろいによる相対する面の“よじれ”、面の方位(アジムス)の“ずれ”である。この“ずれ”は反射光量を著しく変化させることになる。例えば、パビリオン側ロアー・ガードル面の交点のガードル厚さが1か所だけ1%他よりも厚くなったとすると、この二つの面の角度は他の同種の面よりもほぼ0.50小さくなり、その方位は本来のそれよりも約3.3°ずれることになる(図2参照)
 このように二次元的なプロポーション・パラメータおよびシンメトリーのみによる評価では、ブリリアンシーについての充分な評価に到達することができないと思われる。したがって、より重要なのは、三次元なプロポーションが表現できるパラメーターの採用と三次元的なシンメトリーの評価の問題であると考える。これは、より厳密で複雑な計測装置(例えばダイアメンションを上回る機能を有する装置)を用いれば可能となるかも知れない。しかしながら、個々に微妙なシンメトリーのずれを持っている石を、日常の作業の中で素早く的確に評価できるのは、シンメトリーを端的に表現している反射パターンの観察であろう。クラウン側から眺めた場合、テーブルの中央に見られるテーブルの反射像、すなわち二重テーブル、あるいはパビリオン側から特殊な照明条件下で見られるハート形状のパターンである。これらがいずれも完全な8回対称のパターンを示せばその対称性は完全であり、そのずれの度合いにより、どの部分の対称性が崩れているかが判断可能である。写真は、いずれもエクセレントと評価されている石の映像であるが、片やシンメトリーが完全なもの、片やそうでないものである。後者のシンメトリーの崩れは、ガードル厚さの不ぞろい(ハートの大きさの不ぞろいから判断される)と笹目点の不ぞろい(ハートの割れの不ぞろいより判断)である。
 結論として、円形ブリリアント・カットのプロポーションには従来のものに加え評価に値する様々なものが存在する。そしてその評価には、より多いパラメータ、スター点と笹目点を加えた三次元的な見方が重要である。三次元的なシンメトリーが特に重視されるべきであり、これは反射パターンにより判断可能である。したがってカット評価は、パラメータと反射パターンを併用して行う方式が望ましいと考える。


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