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最近、ラジウム処理されたグリーン・ダイヤモンドを鑑別する機会を得た(写真−1)。この石はわずかながら放射化しており、鑑別および取り扱いの上で正しい知識と注意が必要である。 グリーン・ダイヤモンドの色の起源の判定はジェモロジストにとって極めて困難な命題であり、21世紀のジェモロジーにおける最重要課題のひとつと言える。しかし、一部で誤解されているようにすべてのグリーン・カラーの起源が判断できない訳ではない。今回ご紹介するグリーン・ダイヤモンドはその色の起源が明確に処理と判断できる好例である。 ◇鑑別結果
◇チェック・ポイント ☆ 色調はナチュラル・カラーにもありそうな色相と濃度であるが、ファセット・カットの表面付近に色が溜まっているように感じられる。 ☆ ファセットの接合部やキューレット部分にラジエーション・スポット(写真−2)。自然放射線によるスポットは通常、ナチュラル部分に見られる。 |
☆ 放射線メーター(はかるくんDX200)にて0.080μsv/h程度の線量率が計測された(この程度の線量率では人体に害はない)。 ◇核種分析 放射線メーターでわずかながらも反応を示したため、核種分析を行った。その結果、226Ra,214Pbおよび214Biが検出された。これらはすべてウラン系列の放射性核種であり、214Pbおよび214Biは226Ra以降の壊変核種である。 以上のことから当該石はファセット・カットされた(カットの形状からかなり古いと思われる)ブラウン系の天然ダイヤモンドをラジウムが放出する放射線(α線)により処理されたものと結論できる。 ラジウム処理は1904年にWilliam Crooksによってダイヤモンドに初めて行われた照射処理法である。これまでにラジウム塩やラドン・ガスあるいはアメリシウム等が放出するα線が用いられている。処理されたダイヤモンドは表層付近のみグリーンに着色するが、同時にダイヤモンドが放射化するため1930年代まではある程度商業ベースで行われていたが現在は行われていない。 |