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今月の鑑別室から 1999.10
ペリドート中のルドウィヒ石インクルージョンとガーネット中の
オリビン・インクルージョン
 最近、表題に示す宝石中のインクルージョンを鑑別する機会を得た。以下にそれぞれの内容を紹介する。

 インクルージョンの観察が宝石学において重要なのは言うまでもない。インクルージョンの種類、形、色および組み合わせなどが宝石の生成環境に関連するからであり、場合によっては生成起源、産地などが明らかになる。

◇ペリドート中のルドウィヒ石インクルージョン(写真-1)
 ルドウィヒ石(Ludwigite)の名称はオーストリアの化学者 E.Ludwig に因んでおり、1874年に命名されている。化学式は文献によって多少異なるが、 一般にMg2Fe3BO5で表され、ホウ素を含有するのが特徴である。MgをFeおよびNiで、FeをTiやMnで置換する幅広い固溶体を形成し、ルドウィヒ石属を構成している。
 通常、接触変成作用を受けた超苦鉄質岩中にフォルステライト(オリビンの端成分)マグネタイトなどとともに産する。
今回はパキスタン産と言われているペリドート中のインクルージョンとして観察された。写真に示すように黒色の針状で一見するとトルマリンやルチルの様でもあるが、カット石の表面に達していたためEPMA分析で組成を知ることができた。
 パキスタン産の宝石質ペリドートは4〜5年前から宝石市場に登場しており、海外の文献でも同様にルドウィヒ石インクルージョンが報告されている。

◇ガーネット中のオリビン・インクルージョン(写真-2)
 オリビンはフォルステライトとファヤライトの二成分系の完全固溶体をなす主要造岩鉱物である。通常、天然にはフォルステライト成分70〜90%以上のMgに富んだオリビンが多く、苦鉄質〜超苦鉄質火成岩中に産する。宝石品質のものはペリドートの名称でよく知られている。 今回オリビン・インクルージョンが認められたのはパイロープ・ガーネット中であった。カット石の表面に達していたためにおよその屈折率と組成分析を行うことができた。
パイロープ・ガーネットはMg3Al2(SiO4)3の化学式で表され、高圧条件下で生成された苦鉄質岩起源の変成岩やエクロジャイトの成分鉱物として産する。
フォルステライト成分に富むオリビンもパイロープ・ガーネットも超苦鉄質〜苦鉄質岩を母岩としておりマントル起源と考えられる。


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