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今月の鑑別室から 1999.8
天然オージャイト
 最近、写真に示す様な黒色不透明の天然オージャイトが鑑別に持ち込まれる。以下にこの石の宝石学的特徴について報告する。(写真)

 黒色不透明石の鑑別は一般の透明宝石に比べて困難な事が多い。
内部特徴の観察が不可能なことが主たる要因であるが、単結晶鉱物や岩石および模造石など黒色不透明な素材の範囲が広いことも一因である。 
黒色不透明石で最もポピュラーなものは言うまでもなくカルセドニーであるが、スピネル、テクタイト(天然ガラスの一種)、模造石(黒色ガラス)も鑑別で見かける頻度が高い。
 さて、天然オージャイトであるがこれは輝石族の仲間で、鉱物としては最も普遍的な主要造岩鉱物のひとつである。通常は濃い緑色〜黒色不透明なため宝石素材としては一般的ではなかった。ところが最近になってオージャイトのカット石や原石がしばしば鑑別に持ち込まれるようになっている。
 ご依頼者のお一人にお話しを伺うとタイのカンチャナブリやチェンマイの近くから採掘されているらしい。おそらく玄武岩、ドレライトなどの苦鉄質火成岩の風化分解物中から産すると思われる。
 オージャイトは化学組成が(Ca,Mg,Fe2+,Fe3+,Al,Ti)2[(Si,Al)2O6]で表される単斜晶系の鉱物で輝石族のメンバーである。輝石族には多くの端成分と固溶体として中間組成の変種があり、オージャイトはCa2Si2O6のモル分子比が20〜45%のものを言う(図−参照)。輝石族の鉱物は劈開が顕著で劈開面に光沢があることにより、オージャイトの名称はギリシャ語の“光沢、明るさ”を意味するaugeに由来する。

特性値は以下の通りである。
屈折率: α=1.690〜1.705
β=1.695〜1.710
γ=1.715〜1.728
複屈折量:0.023〜0.028
光学性:二軸性(+)
2Vz=25〜80°
比重:3.33〜3.39
紫外線蛍光:不活性
硬度:5〜6


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