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天然パイロクスマンジャイトとして販売されていた石を4ピース検査した。これらのうち2ピースは天然パイロクスマンジャイトであったが、残りの2ピースは天然ロードナイトであった。(写真) パイロクスマンジャイトの名称はpyroxene(輝石)と化学組成のマンガンに由来する。命名時にマンガンに富む輝石と考えられたことによる。実際には、Si−O四面体の鎖状の構造が本来の輝石鉱物とは異なるため、pyroxnoid(準輝石)に属する。パイロクスマンジャイトの化学組成は(Mn,Fe2+)7[Si7O21]で表され、Feに富むものはパイロクスフェロ石と呼ばれる。 マンガンに富む変成岩や花崗岩ペグマタイト中等にスペサルティン・ガーネット、テフロアイト(マンガンに富むかんらん石)、ロードクロサイトに伴って産する。 主な産地は米国カリフォルニア州、オーストラリア、フィンランド等であるが、日本の愛知県田口鉱山からも美しい赤色透明結晶を産する。 ロードナイトの名称はその特徴的なピンク色に因んでバラを意味するギリシャ語に由来する。パイロクスマンジャイトと同様に準輝石族に属する。ロードナイトの鎖の周期が5個の四面体で構成されているのに対してパイロクスマンジャイトは7個で構成されている。 |
ロードナイトの化学組成は(Mn,Ca)5[Si5O15]で表される。組成比は産地により異なるが、Caの少ないロードナイトとFeの少ないパイロクスマンジャイトとは元素分析でも区別できない。Caの少ないロードナイトとパイロクスマンジャイトは多形の関係にあるとも考えられる。 ロードナイトは各地で産するが、宝石品質の透明な結晶はパイロクスマンジャイト程ではないが希産である。 さて、パイロクスマンジャイトとロードナイトの識別であるが、一般鑑別においては屈折率、複屈折量、比重および光学性を正確に測定することから始まる。表に示した通り、パイロクスマンジャイトの方が屈折率、複屈折量が大きく,光軸角が小さい。これらのデータが重複する範囲の場合は一般鑑別では識別不可能である。 さて、今回検査した4ピースはすべてブラジル産のパイロクスマンジャイトとして入手されたものであるが、2ピ−スはパイロクスマンジャイトで2ピースはロードナイトであった。これらはX線粉末回折分析で確認した。トプコンの屈折計による実測値では前者は屈折率が1.724−1.741(0.017)で、後者は1.720−1.732(0.012)であった。(特性比較表) |