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今月の鑑別室から 1999.4
アンドラダイト成分を含有するグロッシュラー・ガーネット
 最近、グリーン・グロッシュラー・ガーネット(ツァボライト)と同様な外観をもつガーネットを2pc鑑別したところ、これらには相当量のアンドラダイト成分を含有していることが分かった。
以下にその宝石学的特徴を報告する。(写真)

ガーネットは一定の結晶構造をもつ鉱物のグループ名で、化学組成の違いによりいくつかの変種が存在する。また組成上、中間タイプも存在し、宝石ガーネットのバラエティーをにぎやかにしている。
 1994年に新しいガーネットの宝石変種としてその産出地から“マリ・ガーネット”あるいは“マリグランダイト”のコマーシャル・ネームをもつガーネットが登場した。
これらは詳しく研究され、アンドラダイト成分を含有するグロッシュラー・ガーネットであることが分かっている。アンドラダイト成分を含有するグロッシュラー・ガーネットは、やや彩度の低い黄緑色〜緑黄色あるいは褐色が一般的である。したがって、その色調から、端成分に近い組成をもつ一般的なグリーン・グロッシュラー・ガーネット(ツァボライト)と識別することがある程度は可能である。
 しかし、マリ共和国から産するガーネットの中にもアンドラダイト成分をほとんど含まない端成分に近いガーネットで彩度の低い緑黄色〜黄緑色のものがあったり、逆に今回の様な例があるため十分な注意が必要である。
 
今回検査した2pcはともに1ct前後で屈折率は1.759と1.769で、比重は前者が3.65、後者が3.67であった。通常のグロッシュラー・ガーネットは屈折率が1.74台で比重も3.61〜3.63程度である。
したがって、この2pcは明らかに特性値が高く、アンドラダイト成分の含有が予想された(図参照)
蛍光X線分光法において組成分析を行ったところ、相当量のFe(鉄)が検出され、アンドラダイト成分の含有が確認された。なお、分光光度計によるスペクトル解析および組成分析の結果、この2pcについてはV(バナジウム)ではなく、Cr(クロム)が着色に関与していることが明らかになった。


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