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今月の鑑別室から 1999.3
天然ペクトライト
“ラリマー”というトレード・ネームをもつ魅力的な宝石素材がある。これはドミニカ共和国等で産するブルーのぺクトライトである。(写真)

 ペクトライト(Pectolite)は化学組成がNaCa2Si3O8(OH)+Mnで現される三斜晶系の鉱物である。結晶は一般に針状を呈しており、放射状や球状の集合体をなすことが多い。
ペクトライトの語源は緻密な塊状で産することが多いのでギリシャ語の凝結を意味する“pektos”に由来する。和名は古くは曹灰針石と言われたが、現在はソーダ珪灰石と呼ばれている。すなわちペクトライトの結晶構造はイノ珪酸塩(Si−0四面体が鎖状に結合)のなかでも珪灰石型を有するためである。
 宝石質のペクトライトは、玄武岩などの塩基性岩の割れ目や空隙に沸石等と共出する場合やアルカリ岩の造岩鉱物として産出する場合がある。主な産地はスコットランド、スウェーデン、ロシア、アラスカおよびカナダ等である。カナダでは1973年に透明なファセット・カットが可能なものが発見されているが、通常は白色〜灰色の塊状のものがカボション・カットされている。
 宝石として最も重要と思われるペクトライトは1974年にカリブ海の島国であるドミニカ共和国で発見されたブルーの半透明な変種である。この美しいブルーは含有する銅成分に起因すると言われている。
ドミニカのブルーのペクトライトはその発見に寄与した地質学者の娘の名前“Larisa”と碧い海を意味するスペイン語の“Mar"を合成した“Larimar”(ラリマー)というトレード・ネームで呼ばれている。
ペクトライトの宝石学的特徴は、以下の通りである。

屈折率:1.59〜1.63(Mnの含有量が高くなると、RIも高くなる)
比重: 2.74〜2.88
硬度: 4.5〜5(シリカ成分が混晶すると、やや高くなる)
分光特性:吸収特性なし
蛍光性:L.W.:変化なし
       (黄濁蛍光)
S.W.:変化なし
       (白濁蛍光)
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