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昨年の秋以降、1ctupの合成モアッサナイトが宝石市場で見られるようになりました。これらはリング等にセッティングされており(写真−1)、今後ダイモンド・ビジネスにおいて注意が必要です。 合成モアッサナイトは米国のC3社が昨年の春頃より販売を開始して話題となっているダイヤモンド類似石です。“熱慣性を応用した判別機(ダイヤモンド・セレクター等)ではダイヤモンドと識別できない”ことで注目され、一時は大きなニュースとなりました。 昨年の前半はサンプルの販売程度でサイズは 0.3ct未満でしたが、昨年の後半になって1ctupのものが宝石市場に登場して来ました。 合成モアッサナイトにおいては話題性が常に先行し、一部では誤った情報が伝えられるなど、ジュエラーや消費者に必要のない不安感を与えているようです。 ここでは“目視”と“ルーペによる検査”を中心に合成モアッサナイトの識別法をご紹介します。 ◆鑑別上の注意点 ◇目視 ・カラー・グレードはI以下。 ほとんどの場合グレイッシュあるいはグリーニッシュ。 ⇒現段階においては完全に無色のモアッサナイトを合成するのは困難であるらしい。 ・分散度が大きいためファイアが強い(写真−2、3)。 ⇒分散度は0.104 でダイヤモンドの二倍以上。 |
◇拡大 ・顕著なダブリング。 やや傾けてフェースアップにてパビリオン側を観察(写真−4、5、6)。 テーブル方向より二次的な反射像を観察(写真―7)。 ⇒複屈折量は0.043 でペリドートよりも大きい。 ・ 針状インクルージョン(写真−8、9)。 ⇒C軸(光軸)に平行に(テーブルは光軸に垂直にカットされている)針状インクルージョンが発達。キューレット付近にある場合はパビリオン・ファセットに反射像が映る(写真−10)。 ・ダイヤモンドとは異なるガードルの仕上げ(写真−11、12)。 ・シャープさを欠くファセット・エッジ ⇒硬度は9.5 であるがダイヤモンドよりははるかに柔らかいためファセット・ エッジにシャープさを欠くと言われている。しかし研磨したてのものはダイヤモンドのファセット・エッジと区別が付き難い(写真−13)。 ・各ファセットで同方向のポリッシング・ライン(写真−14)。 ⇒ダイヤモンドはファセットごとにポリッシングの方向が異なる。 以上の点を注意すれば目視とルーペのみでも十分鑑別可能と思われます。 〈その他〉 ◇赤外線反射率計がお手元にあれば合成ルチルの近くを指すので参考になります。 ◇熱慣性を応用した判別機では識別できません。 注)拡大写真での色は光源の色温度が統一されていないため正確ではありません。 |