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今月の鑑別室から 1999.1
天然リヒテライト
最近、リヒテライトと呼ばれている魅力的な青色半透明石を鑑別する機会を得た。
以下にその宝石学的特徴を報告する。


 最近、写真に示すような魅力的な青色半透明石を4pc鑑別する機会を得た。サイズは2〜5ctの範囲であった。屈折率は1.61−1.62で複屈折量はおよそ0.01程度であった。比重は3.04〜3.06であった。
ハンディ・タイプの分光器では特徴的な吸収は認められず、紫外線下では長波・短波とも不活性であった。カラー・フィルター下では暗赤色を示した。
拡大検査ではネフライトを思わせるような微細な繊維状の組織が認められ、偏光下では結晶質反応(多結晶)を示した。
これらの一般鑑別検査から、角閃石属の鉱物であることが予想されたが、鉱物種を決定することができなかった。ご依頼者に相談したところ、リヒテライト(RICHTERITE)として入手しているので確認していただきたいとの事であった。
 石のごく一部を削ってX線粉末回折分析を行ったところ、角閃石属のリヒテライト、エデナイト、アルベゾナイトの候補に絞られた。蛍光X線分析によってアルミニウムが全く含有されないことから、これらの候補のうちリヒテライトであることが確認された。
リヒテライトは、化学組成がNaCa(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2で表される単斜晶系のアルカリ角閃石の仲間で原則的にアルミニウムを含まない。ドイツの鉱物学者 T.Richterにちなんで1865年に命名されている。
ある種の再結晶石灰岩中、接触交代鉱床のスカルン中、あるいは地下深部起源の含準長石深成岩の副成分鉱物として産する。有名な産地としてはロシアのコラ半島、カナダ、マダガスカル、ビルマおよびオーストラリアなどである。日本でも岩手県や愛媛県の変成層状マンガン鉱床の低品位鉱石中で発見されている。
残念ながら今回の依頼石についての正確な産地や産状は不明である。リヒテライトは通常、灰緑色〜褐色の繊維状集合体で産しており、宝石素材としては一般的ではなかった。しかし、今回のような魅力的な青色石は耐久性もあり、宝石としての資質を備えている。


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