>>Topへ戻る >>「Research Lab. Report」タイトルリストへ戻る

今月の鑑別室から 1998.11
フラックス合成ルビーの小粒石
 最近、セッティングされた商品の中に、フラックス合成ルビーの小粒石が発見された。
以下に、その石の特徴について報告する。


合成ルビーの小粒石が、セッティングされた商品中に見付かることは珍しいことではない。ただし、この場合の合成ルビーはベルヌイ法であるのが常である。ベルヌイ法といっても最近のものは、天然石と同様に加熱エンハンスメントが施されているため、拡大検査の所見では識別が困難な場合がある。すなわち、ボラックス等がカット石表層のクラックから内部に広がり、天然石中の液体インクルージョンと酷似するようになるためである。したがって、ルビーの鑑別には、起源が不明瞭な液体様インクルージョンは決め手にはならない。
さて、今回紹介するのは、写真-1に示すようなデザインの商品に、従来はなかったフラックス合成ルビーが混入していた例である。
 写真の中央下に石をはずした場所が1か所認められるが(詳しく検査するためにご依頼者に取りはずしていただいた)、ここにフラックス合成ルビーがセッティングされていた。
他のすべてのルビーは天然石であった。
 問題のルビーは他のすべてのルビーと比較して、長波・短波ともに赤色蛍光が強く、また、天然ルビーの証拠となるインクルージョンが認められなかった。フェザー状のインクルージョンが見られたためフラックス合成と考えられたが、これまでフラックス合成の小粒石は、このような小粒石としてセッティングされた例がなかったので、ルースの状態で詳しく検査した。

 拡大検査では写真-2に示すように黒い充填物(おそらくMo系のフラックス)を伴うフェザー・インクルージョンがはっきりと確認できた。
 紫外−可視領域の分光測定では紫外部の透過率が高く、合成の明確な特徴を有していた。蛍光]線による組成分析では、微量成分としてCr、Ti、Moが検出され、V、Fe、Gaは検出されなかった。
 以上から、このルビーはチャザム・タイプのフラックス合成石と考えられる。


Copyright ©2000-2001 Zenhokyo Co., Ltd. All Rights Reserved.