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今月の鑑別室から 1998.09
端成分に近いパイロープ・ガーネット
最近、これまでに例のない端成分に近いパイロープ・ガーネットを3pec鑑別する機会を得た。これらは、屈折率が1.71〜1.72と極めて低い値を示した。

 パイロープ・ガーネットはマグネシウムとアルミニウムを主成分とするガーネットで、Mg3Al2(SiO4)3の化学式で表される。宝石質のパイロープ・ガーネットは、通常、アルマンディン成分やグロッシュラー成分など他のガーネット成分を25〜30%含有している。
 パイロープ・ガーネットの語源は、その特徴的な血赤色から“火のような”を意味するギリシア語に由来する。純粋なパイロープならば、着色元素を含まないため無色になるはずであるが、普通はアルマンディン成分や、わずかに含有するクロムにより着色している。歴史的に有名な産地はチェコのボヘミア地方で、16世紀から採掘されている。ほかにアリゾナ、東アフリカ、オーストラリアなどで産出している。これらの典型的な血赤色のパイロープは、屈折率が1.74程度である。端成分のパイロープ・ガーネットの屈折率(理論値)は1.714であるが、アルマンディン成分などの含有率の増加とともに上昇する。これまでに知られている宝石質パイロープ・ガーネットの屈折率の下限は1.730程度であり、これらは淡色なため、通称“パステル・パイロープ”と呼ばれている。
 さて、今回紹介するパイロープ・ガーネットはイタリア産のもので、高度の変成作用により形成された変成岩を母岩としており、高圧タイプのマイカ中に埋没して見付かるものである。この地のパイロープ・ガーネットは、端成分に近いガーネットとして鉱物学的には古くから知られているものである。しかし、カットされて宝飾用に供されるようになったのは、ごく最近のようである。

 写真に示すように、これらは淡い色調をしており、特性はに示すとおり宝石質パイロープとしては極めて屈折率が低く、端成分に近いガーネットであることがわかる。


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