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最近、クニシュカ合成ルビーを鑑別する機会が増加している。これらは、特徴的な内部特徴および化学組成により鑑別可能である。 クニシュカ合成ルビーは、オーストリアのPaul Otto Knischka氏により製造されたフラックス法による合成ルビーで、1980年代初頭から市場供給されている。1980年代後半には、一部のジェモロジストに対して天然ルビーとしてプロモートするなど物議を醸した合成ルビーである。初期のものはベルヌイ合成ルビーやインド産の天然コランダムを種に用いて合成していたが、後期のものは無核核形成で合成していると言われている。いずれにしても近年は、日常の鑑別業務で遭遇することはほとんどなかった。しかし、1997年のツーソンのミネラル・フェアで、クニシュカ合成ルビーを扱っている業者があり、また1997年の後半から鑑別に持ち込まれるようになっている。 鑑別で遭遇するクニシュカ・ルビーは、ミャンマー産等の非玄武岩起源のルビーと同様の色調をしており、外観では天然石とは区別できない(いかにも合成という印象はない)。屈折率、比重などの特性も天然と重複する。紫外線蛍光は長波・短波とも鮮赤色蛍光を示す。 |
この蛍光の鮮やかさは一応注意信号であるが、わずかにオレンジ色がかったクニシュカ・ルビーの蛍光色は、アフリカ産等の天然ルビーにも一般的であるため決め手にはならない。拡大下では、チリチリとした印象のフェザー・インクルージョン(写真-1)や、メッシュ状のフェザー・インクルージョン(写真-2)が特徴的である。拡大率を上げると、両錐体をしたネガティブ・クリスタルや二相インクルージョンがしばしば見られる。時折、プラチナと考えられる金属薄片インクルージョンが観察されるが、そのサイズは概して微細である。蛍光]線で微量元素を測定すると、Ca、Ti、Cr、Fe、KおよびWが検出される。特にW(タングステン)はタニシュカ合成ルビーに特徴的なフラックスであり、合成起源を明確にする。
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