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さまざまなタイプのイエロー・ダイヤモンドのCLおよびその他の特徴

1997年度宝石学会日本講演要旨

ここ数年、ファンシー・カラー・ダイヤモンドは人気のアイテムとなっている。その中でも特にイエロー系には各種のタイプが見られ、商品としての評価もさまざまである。加えて、わずかではあるものの、宝石市場にもすでに合成ダイヤモンドが出現するようになった今、イエロー系ダイヤモンドの特性に関する理解は非常に重要である。今日、ダイヤモンドは一般に、窒素などの不純物元素により、それぞれのタイプに分類されることはよく知られている。イエロー系のダイヤモンドは基本的に窒素をある程度含むI型に属するが、その中でさらに細分化される。さらに、現実に出現する天然ダイヤモンドは、1種のみの純粋なタイプはまれでいくつかのタイプが複雑な累帯あるいは分域をなしているのが普通であるとさえ言われている。
今まで、このようなダイヤモンドのタイプ分類に関しては、主として分光分析が中心であったが、カソード・ルミネッセンス法では、ほとんど純粋なそれぞれのタイプの特徴から、数種のタイプが複雑に混ざり合った特徴まで、より明確、かつビジュアルに捕らえることができる。その他、色調そして特徴的な蛍光性、内部歪み、分光特性などの特性と併せて、それぞれのタイプの特徴的なCL特徴を紹介する。

Ia型(ケープ系)
淡黄色から褐黄色まで、市場に流通するイエロー系の中で最も普遍的に見られるのが、
Ia型のケープ系である。炭素原子が抜けた空孔を取り囲む3個の窒素原子<N3センター>に因る着色であるこのシリーズのイエロー・ダイヤモンドには、415nmおよび450〜480nmの、俗に“ケープ・ライン”と呼ばれる吸収が特徴的である。また、クロス・ニコル下では、八面体面{111}に平行な歪が観察される。
CL法におけるこのタイプの典型的な特徴は、累帯構造に対応する成長縞である。青色または/および黄色の発光が見られ、一般にCLで黄色の発光が強くなるほどボディー・カラーでも黄色の色調が強くなる傾向がある。
【fig-1】【fig-2,3,4】

Ia型(IaAまたはIaB型)
天然イエロー・ダイヤモンドに中に、放射線照射による人工着色に酷似した帯緑黄色を示す
Ia型も存在する。
これらは、2個以上の複数の窒素原子を置換した
IaAあるいはIaBのタイプが、地質学的なスパンでの自然照射の後、アニールを受けたと思われる。着色のメカニズムは人工的な放射線照射と全く同様であるため、両者はいずれにも503nm(H3センター)と496nm(H4センター)の吸収が見られる。しかし、クロス・ニコル下でかんさつされる八面体面に平行で、しかも細かい歪はこのタイプの天然イエローのみに見られ、アニールを物語る特長と思われる。CLではケープ系に一般的な成長縞はむしろまれで、ほとんどが不規則なパターンを示す。
【fig-5】【fig-6,7,8】

Ia型(H richタイプ)
基本的には
IaA+IaBで、炭素原子と結合した水素を多く含む特殊なタイプで、やや灰色みを帯びた黄色から褐黄色。830nmおよび730nmに広い吸収、そして563nmと545nmに吸収ラインが見られ、また紫外線下で濁った黄色と青色の斑状の蛍光を発するのが特徴である。
CLでも同様に斑状の蛍光が見られ、非常に不規則なパターンを示すものが多い。
【fig-9】【fig-10,11】

Ib型
置換型単原子窒素に因る着色で、彩度の高い美しい黄色、いわゆるファンシー・イエローを呈する。しかし、ほとんど純粋なIbで構成されるものから、かなりIa型を含むものまである。ほとんど純粋なケープは紫外線下では不活性で、550nm以下をゆるやかに吸収するのみで、明らかな分光特性は示さない。Ia型を含む場合には鮮黄色から黄濁蛍光を発し、混在が進むほど、分光曲線にも変化が見られるようになる。Ib型の典型的なCLでは、全体が黄色系の発光を示して、その中に後天的な塑性変形に起因した八面体面に平行な細線が多数見あられるが、混在が進むほど乱れて不規則になる。
【fig-12】【fig-13,14】【fig-15,16】

Ia+Ib+II型(Mixed)
もともと
I型とII型の混在するものが、後天的に自然照射、そしてアニールを受けたと思われ、特異な帯橙黄色を呈する。紫外線下では、橙黄色から鮮黄色蛍光とともに、燐光を示すのが特徴である。分光特性ではIb型の特徴である550nm以下のゆるやかな吸収とともに、アニール後に表れるH3およびH4センターにと伴う470nmの吸収が見られる。このタイプには、通常、明らかな内部歪は観察されない。このタイプはCLで非常に不規則な発光が見られる。部分的に色の異なる斑状の発光が典型的なパターンであるが、黄色の発光部分には、Ib型の特徴である規則正しく交差する細線が見られることも多い。【fig-17,】【fig-18,19,20】

◆ 処理ダイヤモンド
I型に放射線を照射した後にアニールにより、てりの高いレモン・イエローから緑黄、褐黄そして橙黄までの色が人工的にえられる。これらの分光特性では、原材料として使われるそれぞれのタイプの特徴に加えて、処理を示す595nmの吸収、496nmの吸収、そしてそれより弱い503nmの吸収が典型的である。
CLでは基本的に、照射されるダイヤモンド本来のタイプのパターンが表れるが程度の差はあるもの、全体に濁りの発光が人工照射を示唆する特徴である。
【fig-21】【fig-22】【fig-23,24】

◆ 合成ダイヤモンド
現時点では、市場で遭遇する可能性のある合成ダイヤモンドは、
Ib型の鮮やかな黄色、褐黄色そして照射に因るオレンジ系などである。これらはCLにおいて、それぞれの領域で発光が異なる明瞭なセクター構造が観察されることから、看破は容易である。
【fig-25】【fig-26,27,28】


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