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今月の鑑別室から 1997.12
スター・ダイヤモンド
“スター・ダイヤモンド”と呼ばれる特異な内部構造を持つダイヤモンドが存在する。宝石学では一般的ではないが、ダイヤモンドの結晶成長を知る上で重要なものである。

“スター・ダイヤモンド”といっても、サファイアなどに見られるアステリズムとは異なる。また、星形にレーザー・カットされたダイヤモンドでもない。写真に示すように、微小なインクルージョンの分布(写真-1)や色の分布(写真-2)が星形の形態を示すダイヤモンドである。
 スター・ダイヤモンドは古くから知られているが、現在では成因や研究における歴史的背景を考慮して、“センター・クロス・ダイヤモンド”という用語が用いられている(GEMMOLOGY1996年8月号参照)。
 センター・クロス・ダイヤモンドは、六面体面と八面体面が成長面となったMixed-habit Growthの結果生じたものである。センター・クロス・ダイヤモンドの中で、写真に示すようにエッチングやX線などの手法を用いないでも不純物やカラー・ゾーニングによりビジュアルにスター・パターンが観察できるものが、スター・ダイヤモンドと呼ばれていた。
 ダイヤモンドは化学的に比類のないほど安定である。すなわち、ダイヤモンド形成後の化学反応に強く、ダイヤモンド中のインクルージョンにとっては極めて優れた保護カプセルとして働く。したがって、ダイヤモンドのインクルージョンはダイヤモンド形成期の情報を正確に伝えてくれるので、地球化学の研究対象として重要である。
 またダイヤモンドの内部には、累帯構造が木の年輪のように保持されており、これらもインクルージョンと同様に、その後の環境変化によってもほとんど変化しない。こうした累帯構造からは、結晶の形の変化(等時間面の変化)や結晶方位による変化(等時間面上の変化)など成長履歴に関する情報を得ることができるため、これまでさまざまな手法を用いて研究されてきた。1960年代には主としてエッチング法や備光法、1970年代にはX線トポグラフ、現在では、これらに加えてCL法が用いられている。
 ダイヤモンド・グレーディングにおいては、インクルージョンの存在はクラリティに与える影響のみが考慮されるが、結晶成長の観点から眺めると、ダイヤモンドの生い立ちを探る地下からの手紙となる。


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