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今月の鑑別室から 1997.11
珍しい緑色の天然アンダリュサイト
 最近、緑色の天然アンダリュサイトを鑑別する機会を得た。褐色みを帯びない緑色のものは宝石としては珍しいので、以下に特徴を報告する。(写真)

 アンダリュサイトは多色性が顕著な石の代表例で、通常(褐黄色:褐赤色:灰緑)の強い三色性を有している。今回紹介する石は、写真に示すように多色性は強いが褐色みをほとんど含まない緑色で、一見したところクロム・ダイオプサイドやクロム・トルマリンを思わせるものであった。重量は0.540ctで、隅切ステップ・カットが施されたルースであった。
 この石の宝石学的特徴は以下のとおりである。

屈折率: α=1.635
β=1.640
γ=1.643
複屈折量: 0.008
光学性: 二軸性負号
多色性: 三色性、強(黄色:緑:黄緑)
分光特性: 553.5nm〜550.5nmにかけて明瞭な吸収バンド、
518nmおよび495nmに明瞭な吸収ライン
蛍光性: 長波 変化なし
短波 変化なし
 アンダリュサイトは化学組成がAl2SiO5で表される斜方晶系の鉱物で、同様の化学組成を有するカイヤナイトやシリマナイトと多形の関係にある。今回、着色原因を知る目的で蛍光X線分光法にて元素分析を試みたところ、相当量のマンガン(Mn)が検出された。
 マンガンはアンダリュサイトの緑色の原因になることが知られており、マンガン着色の緑色石をビリディン(Viridine)と呼ぶことがある。
 アンダリュサイトは硬度が6.5〜7.5で、{110}に完全な劈開がある。靭性もやや低く、脆弱な性質を有するため、リングなどに加工する際には注意が必要である。
 アンダリュサイトは、片岩や片麻岩などの広域変成岩中に産し、その名称は、最初に記載されたスペインのAndalusiaに由来する。ビリディンはアンダリュサイトのなかでも稀産の変種で、スウェーデン、ドイツ、ベルギー、ロシア、アメリカ等に産し、日本でも北海道の日高変成帯から産出する。残念ながら今回紹介した石は、ブラジルで購入されたものであるが、はっきりとした産地は不明である。


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