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スカポライトはジェモロジストにとっては馴染みの深い宝石であるが、一般にはまだあまり知られていない。今回はこの石の名称と鑑別特徴について報告する。(写真) スカポライトの語源はギリシャ語のskapos(棒)で、四角柱状のずんぐりとした結晶形に由来する。和名も同様に柱石と呼んでいる。 スカポライトは固溶体を形成する鉱物のグループ名で、Marialite とMeioniteを端成分としている。Marialite は化学組成が3NaAl2Si2O8・NaClで表され、和名では曹柱石と呼ばれている(曹はNaを意味する)。同様にMeioniteは3CaAl2Si2O8・CO3で灰柱石と呼ばれている(灰はCaを意味する)。 また、変種名としてMeionite成分が20〜50%の範囲のものをDipyre、50〜80%の範囲のものをMizzonite と呼ぶことがある。さらに、スカポライトの同義語としてWernerite が使用されることがあるが、鉱物学的にはこの名称は一般的ではない。 さて、宝石としてのスカポライトであるが、色は写真に示す様にイエロー、カラレスおよびバイオレットなどが一般的であるが、ピンク、グレー、パープルなども知られている。また、チューブ・インクルージョンが発達した場合は、魅力的なキャッツ・アイ石となる。 |
固溶体を形成するため屈折率は幅広く変動し、1.54〜1.59の範囲で、複屈折量は0.01〜0.04の範囲にある。これらの値はMeionite成分に富むほど比例的に大きくなる。一般的にはカラレスの特性値が高く、イエロー→ピンク→ブルー→バイオレットの順に低くなる。比重も同様に2.5〜2.8の範囲にある。これらの特性から、水晶や長石属の宝石と混同されやすいが、スカポライトは正方晶系の鉱物で一軸性負号結晶である(Marialite の端成分にごく近い場合は正号となる)ことが識別の手掛かりとなる。
硬度は5〜6の範囲にある。以前にスカポライトをモースの硬度計の5.5の基準に取ろうとする試みがあったが(硬度が5〜6の範囲にある鉱物種が他よりも多かったので)、スカポライトの硬度に思いのほか変化幅があったこともあって定着しなかった。 紫外線下では多くのものが長波、短波とも赤色系〜黄色系の蛍光を発する。強い黄色〜オレンジ色の蛍光は含有するウランに因ると報告されており、赤色蛍光は鉄に因るといわれている(一般に鉄の存在は蛍光を抑制するが、ムーンストーンやスカポライトにおいては逆に活性化させるらしい)。 |