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今月の鑑別室から 1997.08
珍しいジェイダイト類似石
最近、一見ジェイダイトを思わせる石が鑑別依頼で持ち込まれた。検査の結果、染色を施したカルサイトであることがわかった。以下に、その特徴を報告する。

 ジェイダイトの類似石をここで列挙することはしないが、古くから多くの素材がジェイダイトの代用品として利用されている。緑色半透明石で外観が似ていれば、いかなるものでも類似石になり得る可能性がある。最近の海外情報誌には、バンコクを中心に染色クォーツァイトが流行しているという報告もある。
 さて、今回ご紹介する石は、写真−1に示すように外観は白色部が混じった、いかにもジェイダイトを思わせるものであった。
屈折率は部位によってやや異なるが、スポット法でおよそ1.65程度であった。カボション・カットの底面がほぼ平坦であったので通常測定法を試みたところ、1.48付近に不鮮明なシャドー・エッジと1.655にやや明瞭なシャドー・エッジが確認できた。
 比重は静水重量法で2.73であった。
 ハンディ・タイプの分光器では濃赤色部(680nm中心)に染料による吸収が認められた。色素が濃赤色部を吸収している影響で、カラー・フィルター下では変化なしであった。
 長波紫外線下では青白色蛍光(燐光あり)、短波紫外線下でも同様であった。
 拡大による表面特徴はジェイダイトのオレンジ・ピールとは異なり、多くの類似石がそうであるように、つるんとした印象であった。ジェイダイトの鑑別において表面特徴の観察は類似石との識別だけでなく、樹脂含浸の看破も含めて極めて重要である。この際、暗視野照明と斜光照明の両方を同時に用いると観察が容易になる。内部特徴は、やはりジェイダイトの繊維状組織とは異なり、細い針状の結晶がほぼ平行に集合している様子が認められた。また、その結晶の伸長方向から観察すると、写真−2に示すように緑色色素の沈殿が認められた。

 この石の鑑別結果は、

天然カルサイト(処理石)
色素による着色を認む

となる。


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