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今月の鑑別室から 1997.06
カラー・キュービック・ジルコニア
 以前より、各色のキュービック・ジルコニアが鑑別に持ち込まれている。これらはファンシー・カラー・ダイヤモンドあるいは各色のカラー・ストーンに外観が類似しており、鑑別上注意が必要と思われる。

周知の通りキュービック・ジルコニアはダイヤモンドの類似石として最も一般的な人造石である。したがって、通常は無色透明であり、その高い屈折率と適度な分散度から得られる“輝き”がこの石の魅力となる。しかし、各色に着色されたキュービック・ジルコニア(写真-1)は、魅力的なカラー・ストーンの代用石になり得る。また、当然の事ながらその高い輝きとあいまってファンシー・カラー・ダイヤモンドの類似石として最も効果的なものとなる。
 ここ数年のレアー・ストーンおよびファンシー・カラー・ダイヤモンドの需要の増加に伴って、これらとカラー・キュービック・ジルコニアとの識別が鑑別上重要な作業の一つになっている。 
キュービック・ジルコニアの宝石学的特徴を以下に示す。
 化学組成はZrO2で表されるが、常温下で光学的等方性を維持させるために必ず安定剤が添加されている。Y2O3が安定剤として最も一般的であり、通常10wt%〜20wt%添加されているが、C‐Oxと呼ばれているグリーンやブルーのキュービック・ジルコニアは40wt%〜50wt%に達する。
この安定剤の含有量が特性値に影響を与える。すなわち主元素である原子番号40のZr(ジルコニウム)を置換する原子番号39のY(イットリウム)の含有量が多いと、屈折率および比重が小さくなる。
 結晶系は等軸晶系であるが、結晶内部に正方晶系の部分を含みこれらが特有の歪み複屈折の原因となる(写真-2)
屈折率: 2.15〜2.18
比重: 5.5〜6.1
(C‐Ox:5.3〜5.6)
分散度: 0.058〜0.066
分光特性: Er(エルビウム)→ピンク
N(ネオジウム)→ライラック
Pr(プラセオディウム)→イエロー
などの希土類元素を着色元素として含有する場合は、シャープな吸収ライン群を示す。
蛍光性: Erを含有するピンク色は 長波紫外線下で鮮やかな黄緑色蛍光を示す。その他は黄濁、暗赤色 あるいは不活性である。


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