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今月の鑑別室から 1997.04
天然バスタマイト
 最近、天然バスタマイトが鑑別に持ち込まれるようになった。この石は外観が天然ロードナイトに類似しており、従来から両者が混同されている懸念があるのでその特徴を報告する。

バスタマイトの名称は、発見者であるM.Bustamenteに由来している。和名もバスタム石といい、マンガン鉱床にロードナイト、パイロクスマンジャイトおよびロードクロサイトなどと供出する。主な産地はイギリス、スウェーデン、アメリカ(フランクリン鉱山)、日本(岩手県、栃木県および山形県)などであるが、単結晶の産出は珍しい。宝石としてカットされるものは、たいてい多結晶集合体で写真のような外観を呈する。繊維状結晶が集合した場合、シャトヤンシー効果が生まれるものもある。
 さて、バスタマイトは外観だけではロードナイト、ロードクロサイトおよびパイロクスマンジャイトとの識別が困難である。特にロードナイトとは混同されることが多く、従来からバスタマイトにロードナイトのラベルがつけられて陳列されていることもしばしばである。したがって、正確に屈折率、比重などの特性値を測定し、それぞれの特徴を把握しておく必要がある。表にバスタマイトとロードナイトとの特性を比較してまとめた。これを見ると屈折率測定が重要なポイントとなることが解る。ロードナイトはたいてい屈折率が 1.71〜1.72程度であるが、バスタマイトは明らかにこれより低く、通常1.68〜1.69程度である。また比重もロードナイトの3.6〜3.7に比較してバスタマイトは3.3〜3.4と明らかに低い。これまで検査したおよそ20ピースのバスタマイトは、すべて紫外線下で赤色蛍光を発したが、ロードナイトは通常不活性である。ただし、文献上は蛍光を発しないバスタマイトや赤色蛍光を発するロードナイトの報告もあるので慎重な解釈が必要である。

 以上のようにバスタマイトとロードナイトは通常鑑別で識別可能であるが、これらはロードクロサイトやパイロクスマンジャイトと混晶することがあるので、疑問が残る場合は蛍光X線による組成分析あるいは構造解析を行うことが望ましい。

バスタマイトとロードナイトの特性比較
  \石名 バスタマイト ロードナイト
化学組成 (Mn,Ca)3Si3O9 MnSiO3+Ca
結晶系 三斜晶系 三斜晶系
硬度 5.5〜6.5 5.5〜6.5
比重 3.32〜3.44 3.57〜6.76
屈折率 1.67〜1.70 1.72〜1.73
光学性 二軸性(-)
2==30〜40°
二軸性(+)
2V=63〜76°
分光特性1) 430,409nmに吸収ライン 455,430,415,409nmに吸収ライン
紫外線蛍光 長波:赤色蛍光
短波:暗赤色蛍光
長波:変化なし2)
短波:変化なし
注1)塊状結晶のものは、ほとんどの場合、吸収特性なし。
注2)蛍光性は個体差があり、赤色蛍光を示すものもある。


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