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今月の鑑別室から 1997.03
天然スファレライト
昨年来、しばしば天然スファレライトが鑑別依頼で持ち込まれている。宝石品質のスファレライトは希少石ではあるが耐久性にやや難がある。以下にその宝石学的特徴を紹介する。

依頼石はたいてい数ct程度であるが、中には10ct以上のものもある。文献では100ct以上のものも報告されている。色はイエロー、ゴールデン、グリーン、ブラウン、オレンジなどであるが、最近は写真に示す様な色が最も多く鑑別に持ち込まれている。色の美しさもさることながら、この石の魅力は“てり”のある高い光沢と強い虹色のファイアである。したがって、これらの外観から一見しただけではスフェーン、アンドラダイト・ガーネット、合成ジンサイト、あるいは人造キュービック・ジルコニアなどと混同される可能性がある。
スファレライトの宝石学的性質は以下のとおりである。

化学組成: ZnS
スファレライトは亜鉛を主成分とし、和名を閃亜鉛鉱という。見かけが方鉛鉱に似ているが鉛を含まないことからギリシャ語のsphaleros(ごまかしの)から命名。また別名のジンク・ブレンドもドイツ語の同様な意味に由来している。
結晶系: 等軸晶系
光学的等方性のため多色性やダブリングが見られない。したがって、同様な外観を呈するスフェーンとは容易に識別できる。
硬度: 3.5〜4
宝石としては硬度が低い。また十二面体面に平行な劈開も顕著で靭性も低いことから耐久性には難がある。ジュエリーとして利用するには十分な配慮が必要である。
比重: 3.9〜4.1
屈折率: 2.4前後
Feの含有率が増加するに従い屈折率は高くなり、逆に比重は小さくなる。
分散度: 0.156
この分散度の大きさが強いファイアの要因となる。
スペクトル: しばしば690、◎667、651nmにカドミウムによると言われるバンドが認められる。
蛍光性: 長波 変化なし
短波 変化なし
(ただし、ある産地のものには赤色蛍光を示すとの報告があり、これらは同時に摩擦ルミネッセンスもある)
スファレライトは接触交代鉱床、熱水鉱床、黒鉱鉱床などに産する。宝石として重要な産地はメキシコやスペインなどである。


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