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今月の鑑別室から 1996.012
エメラルドの屈折率
 エメラルドの屈折率が、産地あるいは製法によってある範囲内で変動することはよく知られている。しかし、なぜエメラルドの屈折率が変動するかについての理解は必ずしも充分であるとは言えない。今回はエメラルドの屈折率が変動する原因について考え、エメラルドの識別の根拠となり得る事を紹介する。また例外的な事例についても紹介し、その限界についても言及する。(写真)
 
エメラルドの屈折率は、格子定数と分子量から理論的に算定すると、1.5595-1.5632(-0.0037)となる。しかし、実際には、このような低い値のエメラルドはほとんどなく、何らかの屈折率を高める原因が存在するはずである。その一つとして、不純物効果が挙げられる。
エメラルドに含有される不純物元素はCr,Fe,Vが一般的であるが、合成石にはこれらの他にNi、Cuなどが含有されることがある。実験的には、これらの不純物元素の影響は小さく、1wt%のCrをAlと置換させた場合、1.5650から1.5667に増加する程度である。しかし、ロシア製の合成エメラルドでは、かなり多量のFe,Ni,Cr等を混入させているため、屈折率への影響は無視できない大きさとなる。
 2番目の要因として、結晶構造のトンネル中に存在するRb,Cs等のアルカリ元素の効果が挙げられる。天然石では実際にこの効果の影響が報告されているが、合成石中では、アルカリ元素は結晶を分解する作用が強く、結晶中に混入しにくいと言われている。
 3番目の要因として結晶のトンネル中に存在するH2Oの効果が挙げられる。H2Oは結晶成長時の圧力が大きいほど含有量が高くなることが知られている。したがって、エメラルドの成長時の圧力が大きいほど屈折率も高くなる。
 天然エメラルドでは、熱水鉱床で形成するコロンビア産は生成時の圧力が低いため、通常1.57〜1.58の範囲にあり、他の変成鉱床の産地では生成時の圧力が高いため1.58〜1.59の範囲になる。合成エメラルドでは、フラックス法はH2Oの存在しない低い圧力下で合成されるため1.56台の低い値を示し、熱水法はオートクレーブの性能上、圧力に限界があり、コロンビア産と同程度(ロシア製等)かやや低い値(バイロン製等)となる。
 以上のように、エメラルドの屈折率はその生成起源を反映しており、鑑別上、大きな指針となり得る。しかし、まれに屈折率の低いコロンビア産天然エメラルド(1.565-1.571)や、逆に百に一つ程度の低い確率ではあるが、屈折率の高いバイロン・タイプの合成エメラルド(1.570-1.576)のような特異な事例もある。したがって、このような場合には、偏光下の歪みや内部特徴の観察が重要となることは言うまでもない。


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