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今月の鑑別室から 1996.011
ジュエリーとしての合成ダイヤモンド
最近、海外の宝石情報誌に、ジュエリーとしての合成ダイヤモンドに関する記事を目にする機会が多くなっている。これらを概観するとともに今後の動向について推察する。(写真)

 今年の6月、アメリカで開催されたJCKショーでロシア製合成ダイヤモンドの原石、カット石、リングなどが展示されていた。これらを出品していたのはSuperings,Los Angeles,California と Chatham Created Gems of San Franciscoの2社である。
 Superings 社は0.15〜0.25ctのリングにマウントされたイエロー〜ブラウンの合成ダイヤモンドを出品しており、これらは Siberian Branch of the Russian Academy of SciencesとPinky Trading Co.,Bankokとの合弁企業であるTairusが製造したものである。Pinky Trading の社長であるWalter Barshai氏によると、TairusではNovosibirsk の工場でBARS装置を用いてニア・カラレス、イエロー及びブルーの合成ダイヤモンドを製造している。また、イエローの合成ダイヤモンドの一部は、処理(照射とアニール)によりピンクとレッドにされている。Tairusでは1996年6月初旬の時点で月産10〜20ピースの合成ダイヤモンド結晶が製造されていたが、同社の希望としては、今年の冬までに月産100〜300ピースに、1997年の夏までには月産1,000ピースに増産したいとしている。
現在製造されているのは1〜2ctのイエローの結晶が中心で、ニア・カラレスは0.10ct程度のものしか製造されていない。同社の方針では、今後はニア・カラレスよりもカラー・ダイヤモンドの製造販売に指標を合わせるらしい。 
 Chatham社は、ほぼ無色でインクルージョンの多い0.2〜0.4ctの合成ダイヤモンドを100ピース展示した。Tom Chatham 社長によると、これらはプロト・タイプで、彼らのラボでは現在インクルージョンを取り除く研究を進めている。Chatham は今年の後期には、ほぼ無色の合成ダイヤモンドを天然ダイヤモンドの10〜20%の価格で販売したいとしている。
このように、合成ダイヤモンドはジュエリーとして、極めて少量ではあるが宝石市場に浸透し始めており、今後その流通量は増加するものと予想される。現時点の合成技術ではイエロー系の
Ibタイプが最も注意すべき対象であるが、これらを処理したピンク系にも十分注意が必要である。ブルーやほぼ無色の合成ダイヤモンドは現時点では製造がやや困難ではあるが、Chatham 社は無色合成ダイヤモンドの製造販売に焦点を合わせており、今後とも動向を見守る必要がある。


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