>>Topへ戻る >>「Research Lab. Report」タイトルリストへ戻る

今月の鑑別室から 1996.05
宝石用品質の天然ダンブライト
 最近、10ct upの無色透明石が3ピース、鑑別依頼で持ち込まれた。これらは検査の結果、天然タンブライトであることがわかった。
このような大きなサイズのタンブライトは比較的珍しいので、以下に宝石学的特徴をご紹介する。(写真)


 依頼石は3ピースとも、ステップ・カットあるいはファンシー・カットが施された無色透明石で、リングに加工されていた。重量は、セット石のため測定できなかったが、それぞれ12.47、11.04、10.97ctの刻印が打たれていた。
 ダンブライトの一般的な宝石学的特徴は以下のとおりである。
化学組成: CaB2Si2O8
結晶系: 斜方晶系
R.l.: α=1.626〜1.627
β=1.629〜1.630
γ=1.633〜1.634
D.R.: 0.006〜0.007
光学性: 二軸性負号
2Vx=88°
赤色光〜緑色光:負号
青色光〜紫色光:正号
S. G.: 2.97〜3.03
スペクトル: 吸収特性なし
(時にディディミウム・ライン)
蛍光性: 長波 青〜青緑色蛍光
短波 変化なし

 ダンブライトはR.
I.が主要宝石のトパーズと近似する。したがって両者の特徴と光学性を正確に把握しておかないと、鑑別が困難なことが予想される。トパーズのR.I.は、
  α=1.607〜1.629
  β=1.610〜1.632
  γ=1.618〜1.649
D.R.は0.008〜0.010で二軸性正号である。この値はOHタイプとFタイプで異なるが(OHタイプはR.I.が高め)、いずれのタイプも中間値βは明らかにαに近く、D.R.は最低でも0.008以上である。これに対してダンブライトのβ値はαとγのはぼ中間値となり、光の波長(色)によって正号と負号が逆転する。また、D.R.は明らかにトパーズに比べて低めである。ダンブライトの産状は、ドロマイト中あるいは花崗岩質岩石中の炭酸塩岩脈に産する。産地は米国コネチカット州Danbury(Danburiteの語源となる)、メキシコ、ビルマ、日本(尾平)、マダガスカル、ロシアなどである。


Copyright ©2000-2001 Zenhokyo Co., Ltd. All Rights Reserved.