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今月の鑑別室から 1996.03
ロシア製熱水合成エメラルド
 最近、ロシア製熱水合成エメラルドを研究用に3pc入手した。今後、国内市場においても、このタイプの合成エメラルドに遭遇する機会が増加すると思われるので、以下にその特徴を報告する。

 ロシア製熱水合成エメラルドは1980年代の前半から既に製造が開始されており、当研究室でも何度か研究報告を行ってきた。新しいものでは、AGEEと呼ばれている合成エメラルドの中にロシア製のタイプがあることを報告している(GEMMOLOGY 1994年12月号)。現在のところ、国内において合成エメラルドの主流はバイロン・タイプのものであり、ロシア製のものは鑑別でもほとんど遭遇することはなかった。ところがごく最近の情報では、ここ数年来、ロシアではいくつかのラボで多量に合成エメラルドが製造されており、ヨーロッパあたりでは供給過剰で合成エメラルドの価格破壊が生じているらしい。したがって国内においても、今後、ロシア製熱水合成エメラルドに遭遇することを念頭にとどめておくべきである。
 今回入手した合成エメラルドは0.46、0.80、1.14ctのルースで、2pcがエメラルド・カット、1pcがオーバル・ファンシー・カットが施されていた。R.
I.は、ナトリウム光源を用いてトプコン製の屈折計で測定したところ1.573−1.579〜1.574−1.580で、D.R.は0.006であった。
この数値はコロンビア産の天然エメラルドに完全に重複している。二色性は明瞭で黄緑と青緑を示すが、コロンビア産よりは若干ザンビア産に類似した青みの強い印象を持った。紫外線下では長波・短波ともに不活性で、カラー・フィルター下でも同様であった。したがってR.I.と蛍光およびカラー・フィルターの反応が一致しないことが第1のチェック・ポイントとなる。ハンディ・タイプの分光器ではクロム・ラインが認められ、427nmにFe3+による吸収も確認できた。さらに、ロシア製熱水合成エメラルドに特徴的な606nm、595nmのNi3+の吸収も確認できた。拡大下では、写真に示すような犬牙状あるいはシダの葉状の成長線が認められた。このような成長線はロシア製熱水合成エメラルドに特徴的なもので、天然石には認められない。

 以上のように、ロシア製熱水合成エメラルドの鑑別は決して難しいものではないが、R.
I.あるいはフィルターだけの単純な検査だけでは対応できないことを強調しておく。



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