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今月の鑑別室から 1996.01
放射線照射と含浸が施されたブルー系のダイヤモンド
 従来、放射線照射によるブルー系のダイヤモンドは目にする機会が多いが、最近になってこれらの照射ブルー系ダイヤモンドに、透明材の含浸を施したものに遭遇するようになった。
 以下にその特徴を報告する。(写真)


ダイヤモンドは、通常、無色透明であるが、明瞭な色を有するものは、ファンシー・カラーとして高く評価されている。それゆえに、もともとカラー・グレードの低いケープ系や淡いブラウン系などを原料として放射線照射と、場合によってアニールを組み合わせてブルー、グリーン、イエロー、ピンクなどのカラー着色が行われている。放射線照射によるブルー系のダイヤモンドは、通常、淡いブラウン系のダイヤモンドにリニアック等の線型加速器を用いて電子線を照射して着色している。この際、アニールの必要はないらしい。この照射ブルー系ダイヤモンドの特徴は、濃いブルー〜グリニッシュ・ブルーの色相を持つことで一般に天然ブルー系の色よりも明瞭である。またサイドから観察すると、着色前のブラウン系の色帯が残っていることが多く、クロスニコル下でこの部分に明瞭な二次干渉の歪を伴っている。たいてい長波紫外線下では青白滑〜黄濁蛍光を示し、分光光度計でGRl(741nm)吸収を示す。
 ダイヤモンドを濃いブルーに着色するとフェザー等は見えにくくなるために、照射に供される原材はカラー・グレードだけでなく、クラリティ・グレードの低いものも利用されるようである。

 最近、このフェザーやクリベージ部分に隠ペいを目的とした高屈折率の透明材の含浸を施したものに遭遇する機会が増えてきた。これらの含浸は無色のダイヤモンドには従来知られてたが、放射線照射されたカラー・ダイヤモンドでは一般的ではなかった。含浸された部分には、写真に示すような特異な干渉色が見られるためそれとわかるが、この際、ハロゲン・ランプの偏射光あるいはデーライトを用いると観察しやすい。
このようなダイヤモンドの鑑別結果は、

天然ダイヤモンド(処理石)
「照射による色の改変を認む」
「改変を目的とした透明材の含浸を認む」

となる。


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