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◆◇様々なグレード石の実測結果
 現行基準で評価された、Excel-lentからFairまでの各数個の石の計測結果の平均値とそのバラツキ範囲を示したのが表-1である。
この表から、
1. パビリオン面とベゼル面は当然それぞれ従来の評価基準値の範囲内に収まっている。
2. スター面角度は基準値とその範囲の規定がなされていないが、下位のグレードほどそのバラツキ程度が増大している。
3. UG面についても同様にバラツキの増大が見られる。
4. 笹目数値の基準はないが、下位グレードほどそのバラツキは増大している。
5. ガードル径、キューレット及びテーブルの偏差にもほば同様な傾向が見られる。
6. 最も顕著にグレードに比例しての差異が見られるのは、構成各面の角度方位のバラツキである。この数値の乱れは先に述べたとおり立体的な面の配置の乱れ、立体的なシンメトリーの乱れを如実に示すものである。

◆◇シンメトリーの判定試案
 従来、シンメトリーは構成各面のサイズ、角度数値や二次元的な配置で判断されているきらいがあったが、先に述べたとおり、光の反射屈折はこれに関与する面の立体的な相互関係で決まる訳であり、この相互関係は各面の角度やサイズはもちろんのこと、その方位差が考慮されなければならない。すなわち角度方位を判断基準の一つとして取り入れるべきであり、むしろこれをより重視すべきであると考える。
 表-1の結果を参考にして、角度方位差のバラツキ度合いを次のようにランクづけし、シンメトリー判定の一項目に加えてはどうかと考え、その基準の試案を表-2のごとく作成してみた。あくまでも試案であり、
さらに計測数を追加し、より信頼性の高いものにしていかねばならない。
  Excellent Very Good Good Fair
(6個平均) (max-min) (6個平均) (max-min) (6個平均) (max-min) (6個平均) (max-min)
クラウン側
ベゼル面角度 °
  〃 方位 °
 
34.0
45.0
 
0.9
4.8
 
34.2
 
 
2.3
4.5
 
35.1
 
 
3.4
13.3
 
34.3
 
 
4.4
19.6
スター面角度 °
  〃 方位 °
22.9
45.0
1.6
4.8
22.7
 
2.2
8.6
22.8
 
7.0
8.5
21.1
 
5.8
16.5
アッパーガードル面角度 °
    〃    方位 °
41.4
22.5
3.0
14.0
40.5
 
4.1
16.5
41.8
 
9.3
22.9
42.3
 
4.8
22.0
パビリオン側  
パビリオン角度 °
  〃  方位 °
 
40.8
45.0
 
0.4
2.0
 
40.8
 
 
0.9
4.3
 
40.8
 
 
0.9
8.4
 
41.2
 
 
6.4
7.4
笹目数値         %
76.3 4.9 76.3 6.7 82.9 1.5 76.9 13.9
ロワガードル面角度 °
   〃   方位 °
42.1
22.5
0.8
1.7
42.0
 
1.1
3.2
41.7
 
1.2
22.4
42.6
 
6.6
25.7
ガードル径偏差 %
0.7   0.7   1.9   2.1  
キューレット c/oc  %
1.4   1.1   1.5   3.9  
テーブル   t/oc %
0.5   0.6   0.7   1.5  
表-1:カット評価と計測結果

基準 Excellent 範囲 Very Good 範囲 Good 範囲 Fair 範囲
クラウン側
ベゼル面方位差
スター面方位差
 
45°
45°
 
±2.5°
±2.5°
 
±4°
±4°
 
±7°
±7°
 
±10°
±10°
パビリオン側
パビリオン角度
  〃  方位
 
45°
22.5°
 
±1.5°
±1.5°
 
±2°
±2°
 
±7°
±7°
 
±10°
±10°
表-2:角度方位によるシンメトリー判定基準(案)

◆◇H&Cパターンと計測数値
 現在でも依然として市場から要望の多いH&Cパターンについて、上述のようなより詳細な計測結果とこのパターンの出現形状との関連性を求めておけば、この映像からもシンメトリーの判定が可能ではないかと思われ、検討した。表-3とこれに関連した写真に示したのは、Excellent、Very GoodおよびGoodに該当する石のH&Cパターンである。これらの石の計測結果は表に見られるとおりで、
これと映像との関連性は明確である。すなわち、
1. これら映像の全体的な形状は、当然のこととして、各部の計測数値のバラツキが少ないExcel-lent石が最も整い、Very GoodそしてGoodの順である。
2. ハート本体の形状はほぼパビリオン側の諸数値に支配される。
その数値のバラツキの少ないEx-cellent石が最も整っている。ハート形状の大小が見られるのはパビリオン側の角度方位の乱れに原因している。
3. ハート本体と先端部の鏃の間隔の増大とブロークン・ハートの出現は笹目数値の増大に関連する。計測数値はこのことを如実に示している。
4. クラウン側の数値は、H&Cパターンにそれほど関与しないが、ベゼル面角度が小さい場合にはバタフライ・パターンが出現する。Very Good石に一部見られる。
5. キューピット・パターンはパビリオン面とベゼル面に支配される。これらの数値の乱れの少ないExcellentとVery Good石で整った映像が見られる。
6. 映像から具体的なプロポーション数値を導き出すことは不可能であるが、経験を積むことにより概略のそれを推定することは可能である。

  Excellent Very Good Good
(平均) (max-min) (平均) (max-min) (平均) (max-min)
クラウン側  
ベゼル面角度 °
  〃 方位 °
 
34.1
45
 
0.6
3.5
 
33.6
 
 
2.3
3.5
 
35.5
 
 
3.4
13.3
スター面角度 °
  〃 方位 °
41.3
22.5
1.0
5.3
22.5
 
1.5
4.3
20.2
 
7.0
8.5
アッパーガードル面角度 °
    〃    方位 °
41.4
22.5
4.1
7.2
39.1
 
2.6
9.2
42.1
 
9.3
22.9
パビリオン側  
パビリオン角度 °
  〃  方位 °
 
41.1
45
 
0.1
1.3
 
40.9
 
 
0.7
4.3
 
41.4
 
 
0.9
8.4
ロワガードル面角度 °
   〃   方位 °
42.3
22.5
0.5
1.0
42.0
 
0.8
0.7
42.5
 
22.9
45.0
笹目数値         %
75.8 2.9 78.9 6.7 79.5  
表-3:カット評価と計測結果

◆◇まとめ
1.最近の計測方式では、カットの三次元構造の把握が可能。
2.このことから、三次元的なシンメトリーの自動的客観的な判定が可能。
3.この判定には、構成各面の角度方位が重要な要素である。
4.H&Cパターンから、シンメトリーを含め、カット・グレードの判定がある程度可能。
(おわり)
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