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今月の鑑別室から 1997.05
珍しいカラー・ゾーニングをもつ合成クォーツ
最近、珍しいカラー・ゾーニングをもつ合成クォーツを研究用に入手した。以下にその特徴を紹介する。

ここ1〜2年、鑑別に持ち込まれるクォーツのなかで、合成石に遭遇する機会が増加している。そのほとんどはアメシストであるが、なかにはシトリンやトルマリンに類似したグリーン・クォーツあるいはブルー・クォーツ等も含まれている。このような合成クォーツの増加はロシアでの生産過剰とそれに伴う価格破壊が原因であるらしい。
今回入手したパーティカラーを示す合成クォーツもロシア製として販売されていたものである。写真に示すように色の組み合わせには二種類ある。写真-1のものは無色、褐黄色および緑色の組み合わせで、写真-2のものは無色、黄色および紫色の組合わせである。の色の組み合わせは、天然クォーツにはまず見られないものであるが、写真-2のものは無色の部分を取り除いてカットすれば、天然バイカラー・クォーツ(一般にはアメトリンとして知られている)と同様な外観になるであろう。
 さて、写真-1のタイプであるが、これは結晶のC軸(光学的一軸性では光軸に一致)にほぼ垂直にカットした種結晶を用いて成長させている。無色の部分はほぼこの種結晶に相当しており、褐黄色部と緑色部には光軸にほぼ垂直なカラー・ゾーニングが認められる。この色の組み合わせとカラー・ゾーニングの方向性(天然クォーツには光軸に垂直なC面領域の成長は認められない)が合成石の識別特徴となる。
写真-2のタイプは、これもほぼ結晶のC軸に垂直な種結晶を用いて成長させている。無色の部分がほぼ種結晶に相当しており、黄色部もほぼ種結晶に平行に成長している。紫色部は正負の菱面体面の領域での成長である。したがって、このタイプの識別特徴はもし種結晶部が取り除かれてカットされた場合は、黄色部のカラー・ゾーニングの方向性であろう。


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